スマートフォンを携帯通信会社経由で購入しようとするときに「一括n円」や「実質(負担額)n円」などのPOPを見ることがあるかと思います。
今回は「実質(負担額)1円」となっている、スマートフォンの販売方式について、概要や仕組み・一括購入との違いについてまとめていきます。
実質1円って結局いくらなの? と疑問に思われた際の参考になれば幸いです。

この記事では実質1円というタイトルになっていますが、1円でなくとも実質23円・実質24円や実質48円・〜百円、〜千円や〜万円などでも適用できる内容となっています。
実質1円以外の場合は、「実質1円」の箇所を「実質n円」と読み替えてください。

月ごとの負担額については、【実際の店頭POPから端末代金(本体代金)を計算してみる】の項をご覧ください。

【スマートフォンの販売における実質1円とは?(おおざっぱに)】

実質1円(実質n円)のスマートフォンとは、"分割購入(割賦)に端末返却条件をつけることで、2年間は割安にスマートフォンを所有できますよ"という価格設定です。
つまり、実質1円(実質n円)でスマートフォンを購入しても、実際には1円(n円)では自分のモノにできるわけではありません。(ここ大事!)
端末を指定された期間・条件で返却しない場合は、別途費用が発生することとなります。
※これらのことより、この記事では、実質1円(実質n円)として入手したスマートフォンについては、「購入した」と表現しないこととします。

一括1円(一括n円)と対比されることが多いですが、一括1円(一括n円)の場合は端末代金はその場で全額精算することとなるため、端末代金が将来に渡って請求されると行ったことがありません。(完全買い切りの買い方となります。)

さて、この記事では実質1円(実質n円)の本質について、実際の店頭掲示POPとともに、将来にわたり発生する端末代金の請求内容を含め解説していきたいと思います。

【実質1円のスマートフォンには残価が設定されている】

ここから頻出する単語として「残価」という単語が挙げられます。
「残価」という単語をあまり耳にしたことがない方もいると思いますので、説明しておきます。

携帯通信会社は「買取」することを予定して、端末ローン(分割払い)を設定します。("スマートフォンをお返し"と表現される)
すなわち「端末を2年後にn円で買い取るから、「端末代金」と「買取価格」の差額を払ってね!」ということになります。

ここでいう携帯通信会社が「端末を2年後にn円で買い取る」と決めた価格が"残価"となります。

ここで肝となることとして、2年後に端末を返却しなかった場合(売却・譲渡・紛失・滅失・盗難等)は残価分も請求されます。

【実質1円で使うための条件とは?・条件を守らないとどうなるのか?】

さて、実質1円(実質n円)でスマートフォンを使うためには、どのような条件があるのでしょうか?
主な条件は次の2つです。
また、条件を守らない(満たさない)場合はどうなるかも解説していきます。

●条件1
端末代金を分割払いで購入する。
※分割回数はNTTドコモとauは「23回+残価1回の24回払い」、ソフトバンクは48回払いでスマートフォンを購入することが条件となります。
NTTドコモとauは23回払いの時点で端末返却の申告がない場合は、残価1回分の価格を24回に分割され、47回払いに変更されます。

▲条件を守らないと?→
実質1円(実質n円)の条件でスマートフォンを販売してくれません。
ひどいお店だと、諸割引「定価での販売となります」なんて言われることもあるようです。

●条件2
携帯会社が指定する分割支払回数(多くの場合23〜25ヶ月目)※のタイミングで端末返却の申請をし、端末を破損・故障・改造(非正規修理含む)のない状態で返却する。
※携帯通信会社によって異なるため、POPや契約時の料金見積書を必ず確認しましょう。

▲条件を守らないと?→
最適月以外に返却申し込み・返却した場合
・早期返却申込みの場合
→23回目まで請求が続きます。 早期返却特典を受けられる場合があるため、確認してみましょう。

・返却申込みが最適月より遅くなった場合
→残価を24回に分割した金額を所定回数支払う必要があるため、実質1円(実質n円)に加え費用が発生します。

・返却申込後、指定された期日に端末を返却できなかった場合
残価設定額は免除にならず、請求される可能性があります。

端末を破損・故障した状態で返却した場合

・携帯通信会社が査定の結果、回収できると判断した場合
→端末は回収されます。 故障時費用として22,000円を別途請求されます。

・携帯通信会社が査定の結果、回収できないと判断した場合
→残価設定額は免除にならず、請求されます。 なお、この場合は端末は返却されます。

【実質1円という買い方のデメリットとメリット】

スマートフォンは自分の持ち物としてずっと持っておきたいという、スマ辞書ライター的には、あまり使いたくない買い方ではありますが、可能な限り中立の立場でデメリットとメリットを挙げていきます。

■デメリット

・本体破損、故障などの状況で端末を返却すると、別途費用(多くの場合22,000円)が請求される。
また、本体の状態によっては残価分を支払う必要が生ずる。

・購入に際して信用情報の照会と、契約成立時は割賦販売として登録される。

・(一括n円などの割安条件と比べ)端末を返却しない場合、高い費用が発生する。

・端末を売却しようとする場合、「ネットワーク利用制限の判定が▲」であることより、価格が下る場合(買取業者)や、大手フリマ・オークションサイト(ヤフオクやメルカリなど)に出品できない(出品禁止商品扱い)ことにより、自身で売却する手段がかなり狭まる。

・「ネットワーク利用制限の判定が▲」であることより、ヤフオク・メルカリなどの大手個人間取引サイトで出品・売却することができない。

■メリット

・1〜2年毎にスマートフォンを買い替えている場合、端末返却が前提とはなるが、かなり安い費用で使用することができる、

・端末を定価で購入する場合と比べ、初期にかかる費用が大きく抑えられる。

・多少の傷や使用感の状態によっては、買取業者や大手フリマ・オークションサイトで売却する場合と比べ、実質価格が高くなる場合がある。

などが挙げられます。

【実際の店頭POPから端末代金(本体代金)を計算してみる】

よく目にする端末返却型プログラムの案内で使われる図では、端末代金がいくらかイメージがつきにくいと思います。
実際の店頭POPの商品を元に、端末代金の支払いにおいて「どの月にどのくらいの費用」が発生するのかを表にしてまとめていきます。

なお、POPを確認する上で必ずチェックすべき項目としては「店舗独自割引額」の有無と、その金額です。
店舗独自割引額が大きければ、買い切りを前提とした一括購入希望時もしくは繰り上げ返済をするときに、自身の負担額が減ります。
また、「店舗独自割引額」がない場合は、端末を返却しないことを想定して購入する場合、ほぼメリットなしと見ることができます。

■NTTドコモ(iPhone13 mini 128GB MNP+いつでもカエドキプログラム使用で実質23円)

・POP画像

・契約月を始めとした月々の端末代金支払いシミュレーション

Tips)スマートフォンで閲覧している場合は、ズームすることで鮮明に見ることができます。

・要点

①一括換算するといくら掛かるのか?
【1円×23】+【48,840円(残価)】=46,863円となります。
・Appleの定価が2022年4月時点で86,800円ですので、39,937円お得に購入することができます。

②繰り上げ返済時の割引適用有無
繰り上げ返済した場合でも各種割引が適用されます。
※ただし、購入店舗や施策の内容によって異なる場合がありますので、購入を検討される場合は販売員の方へ確認してください。

③繰り上げ返済の方法
ドコモショップで即日支払うことが可能です。
なお、請求タイミングとの兼ね合いによって、ネットワーク利用制限の判定(分割残りを製造番号から確認する)が△→◯になるまで、時間を要する可能性があります。(当月分の支払い金額が確定しており、変更や調整ができない場合etc..)

④その他備考やメモ
・分割金の初回支払いは、契約月を1ヶ月目とすると、3ヶ月目から開始されます。
・NTTドコモでは実質1円を見たことがありません。 システム上、登録できないものと推測されます。

■au(iPhone13 mini 128GB MNP+スマホトクするプログラム適用で実質1円)

・POP画像

・契約月を始めとした月々の端末代金支払いシミュレーション

Tips)スマートフォンで閲覧している場合は、ズームすることで鮮明に見ることができます。

・要点

①一括換算するといくら掛かるのか?
【1円×1】+【46,560円(残価)】=46,561円となります。
・Appleの定価が2022年4月時点で86,800円ですので、40,239円お得に購入することができます。

②繰り上げ返済時の割引適用有無
繰り上げ返済した場合でも各種割引が適用されます。
また、店舗によっては、月々の本体代金から割引をするパターンのPOPもありますが、繰り上げ返済時に割引が消滅することはないとのことです。


※ただし、購入店舗や施策の内容によって異なる場合がありますので、購入を検討される場合は販売員の方へ確認してください。

③繰り上げ返済の方法
auショップもしくは総合窓口(157)に電話することで、当月もしくは翌月の請求に合算することで繰り上げ返済が可能です。
ネットワーク利用制限の判定(分割残りを製造番号から確認する)が△→◯になるまで、1〜2ヶ月程度かかります。

④その他備考やメモ
・分割金の初回支払いは契約月を1ヶ月目とすると、3ヶ月目から開始されます。
・「1円」の請求は23回目(25ヶ月目)に発生するとのことです。(複数店舗で同様の回答であることを確認)

■ソフトバンク(BALUMUDA Phone+スマホトクするプログラム適用で実質1円)

※記事製作時にiPhone13 miniの案件を発見できなかったため、代替えのモデルケースを紹介します。

・POP画像

・契約月を始めとした月々の端末代金支払いシミュレーション

Tips)スマートフォンで閲覧している場合は、ズームすることで鮮明に見ることができます。

・要点

①一括換算するといくら掛かるのか?
【1円×24】+【71,640円(残価)】=71,664円となります。
・BALUMUDA公式の定価が104,800円(当初)→78,000円(2022年3月〜)、、
当初の価格からは33,156円/価格改定後の価格からは6,336円お得に購入することができます。

②繰り上げ返済時の割引適用有無
繰り上げ返済した場合でも各種割引が適用されます。
その根拠に契約時に締結する「割賦販売価格に¥71,664-」と明記されていることより、各種割引が適用された金額で分割を組むことになることが挙げられます。
※ただし、購入店舗や施策の内容によって異なる場合がありますので、購入を検討される場合は販売員の方へ確認してください。

③繰り上げ返済の方法
ソフトバンクショップもしくは総合窓口(157)に電話することで、当月もしくは翌月の請求に合算することで繰り上げ返済が可能です。
ネットワーク利用制限の判定(分割残りを製造番号から確認する)が△→◯になるまで、1〜2ヶ月程度かかります。

④その他備考やメモ
・分割金の初回支払いは契約月を1ヶ月目とすると、2ヶ月目から開始されます。

■(例外)ソフトバンク(Pixel5a実質48円)

かなり特殊なケースを発見しました。 端末返却不要のパターンです。

・POP画像

・契約月を始めとした月々の端末代金支払いシミュレーション

Tips)スマートフォンで閲覧している場合は、ズームすることで鮮明に見ることができます。

・要点

①一括換算するといくら掛かるのか?
【1円×48】=48円となります。
・Google Storeの定価が2022年4月の時点で51,700円ですので、51,652円お得に購入することができます。

②繰り上げ返済時の割引適用有無
繰り上げ返済した場合でも各種割引が適用されます。
その根拠に契約時に締結する「割賦販売価格に¥48-」と明記されていることより、各種割引が適用された金額で分割を組むことになることが挙げられます。
※ただし、購入店舗や施策の内容によって異なる場合がありますので、購入を検討される場合は販売員の方へ確認してください。

③繰り上げ返済の方法
ソフトバンクショップもしくは総合窓口(157)に電話することで、当月もしくは翌月の請求に合算することで繰り上げ返済が可能です。
ネットワーク利用制限の判定(分割残りを製造番号から確認する)が△→◯になるまで、1〜2ヶ月程度かかります。

④その他備考やメモ
・分割金の初回支払いは契約月を1ヶ月目とすると、2ヶ月目から開始されます。
・完全に端末の転売対策を意識した価格設定であると考えられます。 (詳細は後述します。)
転売ヤーに対しての嫌がらせのようなものですね。 どっちもどっちですが。

【「実質1円」で購入した端末は携帯会社以外に売却しにくい】

端末代金を分割払いで購入しているため、「ネットワーク利用制限の判定」が「▲」判定となります。
※「ネットワーク利用制限の判定」とは携帯通信会社が端末の分割状況などを製造番号から調べることができる仕組みのことです。
更に詳しく「ネットワーク利用制限とは何か?」をお知りになりたい場合は、次の記事をご覧ください。

ネットワーク利用制限の調べ方・結果の意味と判定を変更する方法

ネットワーク利用制限の「調べ方」・「結果の意味」と「判定を変更する方法」について解説しています。なお、用語としてのネットワーク利用制限は次の記事も参考になりま…

このネットワーク利用制限が「▲(三角)」判定の場合、完済済みを示す「○(丸)」判定の場合と比べ、売却時の買取価格に影響します。

・買取業者に対して売却する場合、減額が入る(または)買取を断られる場合がある

・オークション、フリマサイトで出品することができない(出品禁止品対象)

これらの理由より、「実質1円(実質n円)」で入手した端末は、売却の際に本来の価値を発揮できない評価となります。

このことは携帯通信会社にとっては好都合で、端末は再販されにくく、かつ端末の返却率を高めることができるという効果をもたらします。

【回収された端末はどうなるのか?】

回収された端末の行き先は公式にはアナウンスされていませんが、次の通り活用されるのではないかと推測されます。

①携帯通信会社の認定中古品として再販される

②整備品用の端末としてメーカー等に売却される

③B to B(法人間)向けのオークションで売却される(国内・海外)

【まとめ】

携帯電話機の本体割引上限額が総務省により規制され2年が経っていますが、携帯通信事業者はこの「実質1円(実質n円)」スマホという「1つの端末販売で2度収益化」するという、新たなモデルを確立させました。

1度目の利益は、「実質1円(実質n円)」という釣り餌で、新規契約者を確保します。
「通信料金と端末料金の完全分離」の原則に基づき端末購入後に他社へ乗り換えても、割引などが消滅することはありませんが、一部の利用者は端末を購入した携帯通信事業者を使い続けてくれます。
このことにより、通信料金の収益を確保することができます。

2度目の利益は、回収した端末を携帯通信事業者にて再販します。
再販される端末は「廉価機」として、さらに新しい契約者を確保するために用いられます。

この売り方のミソとしては、携帯通信事業者は端末販売に際して、「リースやレンタルではないため資産として計上されない」・「故障時・未返却時は端末代金を利用者に払わせる」という内容であることです。
「実際はリースのような内容」だけれども「所有権は利用者となる契約」を用いた端末販売で利益を得るシステムだということです。

よって、一括や通常分割で端末を購入する場合と比べ、携帯通信事業者の立場が強く・有利である「端末の販売方法」であると考えられます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。